
日本データパシフィック株式会社 TypeQuick事業部 畑山氏と高澤氏
導入の背景:紙のコース修了証をオンラインデジタル発行に
―― オープンバッジを製品に対して導入されたとのことですが、まずTypeQuick事業部について教えてください。TypeQuickは長い歴史があるそうですね。
畑山氏:販売開始から39年になります。1982年にオーストラリアで開発されたものを、弊社で提供しています。タイピングが全くできない方、特にホームポジションからキーボード配列を学ぶためのソフトウェアで、ユーザー層は中高、大学、社会人と幅広いです。今年1月末時点のデータですが、中学高等学校で205校、大学・短大・専門学校等で50校の導入実績があります。この10年間だけでも、150万人以上の方がTypeQuickを利用してパソコンの基礎「タッチタイピング」を習得しています。
高澤氏: 商品は2種類あり、一般向けのTypeQuick Professional(プロフェッショナル)と、小中高校向けのTypeQuick for Schools (スクールズ)です。スクールズの方にはアニメーションやストーリー性を取り入れていて、オーストラリア大陸を冒険しながら進めていくような構成になっています。初心者でも、1日1レッスン1時間の練習を10日間続けるだけで、タッチタイピングを習得することができます。TypeQuickのコースを一通り終えれば、タッチタイピングを確実にマスターできるようデザインされています。
―― 今回オープンバッジを導入された背景について教えていただけますか。導入前の課題や、何か目標があったのでしょうか。
畑山氏: 以前から紙媒体の認定証を発行していたのですが、手間とコストがかかるという課題がありました。昨年、代表からオンライン発行にしたいという意向が出たことをきっかけに、その「オンライン発行の手段」を模索していたこと、 時代の流れで「バッジ」という言葉を耳にする機会が増えていたこと、TypeQuickをさらに発展させるためにも、何か新しいものを取り入れたいという思いもありました。
一番大きかったのは、AXIESという展示会でインフォザインさんのオープンバッジファクトリーと偶然出会ったことです。それまでは「バッジ」という具体的な考えはあまりなかったのですが、オンラインで何かできないかなと考えていたところにその出会いがあったので、縁とタイミングが大きかったと感じています。
採用した理由:信頼感、対応の良さが決め手
―― オープンバッジ発行システムにもいくつかある中で、オープンバッジファクトリーを採用した決め手があれば教えてください。
畑山氏:決め手としては、弊社が手がける日本の大学向けLMSであるWebClassでのお付き合いがあったということが大きいです。安心感がありました。早く運用を開始したかったので、インフォザインさんの対応がとても早く、どんどん話を進めることができたのも大きな理由です。機能もシンプルで分かりやすかったと思います。
―― インフォザインが提供するサービスプランにはプロプランとプレミアムプランがありますが、どちらのプランを選びましたか。
畑山氏:無料トライアルではプロプランの機能を使っていましたが、発行数がまだ少ないことと、価格の面でプレミアムプランを選びました。プロプランにあったPDFバッジ作成機能がある想定で進めていましたが、プレミアムプランにはその機能がありません。ただ、バッジ受領者はバッジを受領後に、オープンバッジパスポートでPDFとしてバッジをダウンロードできるため、そちらで対応できており問題ありません。
―― バッジ発行作業はどのようにされていますか?
高澤氏: 学校の先生から発行対象者の情報をいただき、成績データをこちらで確認しながら判定し、ゴールドやシルバーなどの種類ごとにバッジを直接対象者に発行しています。
―― バッジデザインは外注されましたか?
畑山氏:バッジの画像デザインは今回新しく作ったものではなく、すでに紙の認定証にデザインされていたものの一部を切り抜いて使用したので、コストはかかりませんでした。その元々のデザインは、以前デザイナーさんに作っていただいたものですが、ちょうどバッジにも使うことができました。

TypeQuick技能認定証は、TypeQuickを修了された方の証明書で、Typequick社公認の技能認定証です。技能レベルに応じて3種類あり、クラウド版をご利用の企業/学校のみ、認定証を紙ではなくオープンバッジとしてデジタル発行できるようになりました。
導入効果:今後のバッジ獲得者の増加に期待
――オープンバッジファクトリーの導入によってどのような効果があったのでしょうか。
畑山氏: まだ運用が始まって間もないので、正直なところ具体的な効果は測れていませんが、今後順調にバッジ獲得者を増やしていければと考えています。「オープンバッジが発行されます」というアピールができるようになりましたので、積極的にPRしていこうと思います。
すでにこの春に卒業された学生さんを含めコースを修了された方々にバッジが発行され始めたところです。
導入の課題:バッジの認知度の向上とメリットの訴求
―― 導入にあたってご苦労されたのはどのような点ですか?
高澤氏:一点、技術的な点で、一部のMacユーザーでPDFが開けないという事象が発生しました。
Windowsでは問題なかったのですが。開発元に問い合わせても該当事例がなく、社内で色々試した結果、会社のVPNの影響ではないかという結論になりました。大学や高校など、セキュリティ制限が厳しい環境では、このようなことが起こり得る可能性があるという学びになりました。
―― 先生方や学生からの反応はいかがですか?
畑山氏:認知度という点で、まだオープンバッジ自体が世の中にあまり知られていないのかなと感じています。ユーザーさん、特に先生からオープンバッジの活用方法やメリットを聞かれることがあり、私たちもまだ、生徒や学生にうまく説明できていないのかもしれません。受領率が低いことも気になっています。
高澤氏:大学のメールアドレス宛にバッジを発行したため、卒業前のタイミングでコースを修了した学生の中に、バッジの受領を完了しないまま学校を卒業された方もいるようです。せっかくのバッジを活用していただけないのは残念です。そのため、もっと早めにバッジを受け取り、セカンダリメールアドレスを登録して卒業後も利用できるよう事前に案内できればよかった、という反省点があります。
―― 先生方や学生の方々にオープンバッジのメリットを理解していただくところも課題でしょうか?
畑山氏:デジタルの証明書なので失くしてしまう心配がないこと、履歴書に貼れることやPDFでダウンロードできることなどをお伝えしていますが、もっとアピールできたら良いなと思います。
今後の展開:話題性を活かした販促と自動発行の可能性
――今後、構想されていることがありましたら教えてください。
畑山氏:まず、このオープンバッジ導入をTypeQuickの新しいニュースとしてプロモーションや販促に活用していきたいです。新しいニュースがあることはとても重要なので、今年1年はオープンバッジが発行できるようになったことを一つの軸としてアピールしていきます。
高澤氏:あったらいいなという機能という点では、バッジの種類が成績によってゴールドやシルバーなどに決まるのですが、現状の仕組みでは、申請フォームをバッジごとに作成する必要があります。申請後に成績判定で自動的にバッジが発行されるようなフォームが作成できると良いなと思っています。
将来的にはTypeQuickから成績データなどをAPIで取得し、それに基づいてバッジを自動発行できるような仕組みを検討したいと考えますが、そのためにも申請フォームなどを整えていければと思います。
【インフォザインより】
いくつかのご縁が重なり、短い間に意思決定をされ、タイミングよくオープンバッジを自社サービスに導入された事例です。オープンバッジ自体は国際技術標準に則ったものですので、大きな違いはないかもしれませんが、オープンバッジファクトリーではLTI連携やxAPIを用いた他システムとの連携の仕組みが豊富ですので、発行や管理の面では今後、より便利にお使いいただける可能性があると感じました。
課題として挙げられていた認知度については、オープンバッジの社会での有用性を高められるようインフォザインでも努力してまいりたいと思います。
最後に、本記事を作成するにあたり、取材にご協力いただきました畑山様、高澤様、そして、TypeQuick事業部責任者兼データパシフィック取締役竹井様、誠にありがとうございました。
【オープンバッジファクトリーとは】

オープンバッジファクトリーは、デジタル証明としての国際的な技術標準規格であるオープンバッジ 2.0に準拠した「オープンバッジ」を作成・発行・管理するためのプラットフォームです。
公的な資格試験の合格証から、講座の修了証、イベント参加証、スキル証明や、ゲーム感覚の楽しいバッジ集めまで、教育機関だけでなく、NGOや企業内での人材育成など、子どもから学生・社会人まで、さまざまな用途に対応します。
修了証の発行をデジタルバッジで行うだけでなく、既存の学習活動にオープンバッジを適用することで、マイクロクレデンシャルの導入やゲーミフィケーション化が可能になり、学習成果をより明確かつ魅力的に示すことができます。
オープンバッジファクトリーの概要やサービス内容・プランの詳細など詳しくは下記リンクをご覧ください。
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ITと教育の分野でのイノベーターとしてのインフォザイン

「株式会社インフォザイン」は、東京 上野にオフィスを構え、教育とテクノロジーを融合させたEdTech分野でビジネスを展開しています。
「オープンソースとオープンスタンダードを活用し、教育の未来を創る」ことを目指し、特に力を入れているのは、ルクセンブルクのOAT社が開発したWebベースでアセスメント・テストを実施するためのCBT(Computer Based Testing)プラットフォーム「TAO」をベースとした新サービスの開発と提供です。
オンラインアセスメントのためのSaaS版CBTプラットフォーム「TAOクラウドJP」をはじめ、学力調査、大学入試、各種資格・検定試験などのCBT化に実績のあるアセスメントサービスを提供しています。
また、学習歴の可視化の手段として利用が広がっているオープンバッジの発行プラットフォーム「オープンバッジファクトリー」の日本における独占販売契約を締結し、サービスを提供しています。
なお、教育DXを推進するため、教育に興味を持っているITエンジニアはもちろん、教育分野に課題意識を持っている人材も広く募集しています。
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