探究におけるデジタルバッジ活用をテーマに登壇しました

2026年6月、「New Education Expo 2026(NEE 2026)」東京会場・大阪会場の2会場にて、共通テーマ「探究におけるデジタルバッジ活用 〜学校教育、社会教育を通じ〜」のパネルセッションに弊社も登壇させていただきました。


2026年6月、「New Education Expo 2026(NEE 2026)」東京会場・大阪会場の2会場にて、共通テーマ「探究におけるデジタルバッジ活用 〜学校教育、社会教育を通じ〜」のパネルセッションに登壇させていただきましたので、その様子をご紹介します。

探究的な学びの過程において、子どもたちが学習した内容や身につけたことをどのように捉え、次の学びへとつなげていくか。そのキーとなる仕組みとして「デジタルバッジ(オープンバッジ)」への注目が高まっています。本セミナーでは、学校教育と社会教育を横断して学びをつないでいく可能性や、実践のヒントを4名で探りました。

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登壇者

  • 稲垣 忠 先生(東北学院大学 文学部 教授/学長特別補佐)――学校教育・地域における可能性
  • 荒木 貴之 先生(日本経済大学 経営学部 教授/社会構想大学院大学 教授)――社会教育・生涯学習における可能性
  • 水野 裕子(株式会社インフォザイン 教育環境デザイン部)――オープンバッジ受領体験・機能・事例
  • 堀越 泉 氏(内田洋行教育総合研究所/コーディネーター)

会場では、株式会社デジタル・アド・サービスの 石原 呼春 氏 によるグラフィックレコーディングが行われ、セミナーの議論をリアルタイムで可視化されていました。


オープンバッジとは:成果やスキルをデジタルで証明する仕組み

セミナー冒頭、コーディネーターの堀越氏より、オープンバッジの基礎についてご説明いただきました。

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ーー堀越氏: オープンバッジは、成果やスキルをデジタルで証明する仕組みです。一見すると小さな丸い画像なのですが、その裏側にはバッジ名・発行者・取得条件・知識やスキルといった認証情報(メタデータ)が埋め込まれています。国際標準規格に基づいているので、異なる組織が発行したバッジでも共通の仕組みで管理・運用できる「相互運用性」を持っているのが特徴です。

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そしてもうひとつ大きな特徴が「評価や学習履歴の主権を学習者自身が持てる」という考え方。組織が保管する証明書から、本人が保有・活用する学習履歴へ――この発想の転換は、デジタル庁の「教育DXロードマップ」でも本人起点によるデジタル学修歴証明の活用として明確に位置付けられています。認定系(クレデンシャル)から承認系(レコグニション)までグラデーションでつなぐことができる――ここに、オープンバッジが探究学習や地域での学びと相性が良い理由があります。


学校教育・地域における可能性

東北学院大学の稲垣先生からは、内閣府が推進する大規模研究プロジェクト「SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)第3期:人口減少を機にひらく未来社会」におけるオープンバッジ活用の取り組みをご紹介いただきました。

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ーー稲垣先生: 探究の評価は、難しいですよね。ルーブリックを作っても「これでよいの?」、ポートフォリオに記録させても「さて、どう活かすの?」、個人探究になれば「誰が何を調べているのか把握しきれない」。そのような多くの学校で抱えている課題に、改めて向き合っています。

探究の評価、どうしていますか?

ポートフォリオ・ルーブリック・パフォーマンス課題といった定番の評価手法に加えて、探究が終わった後の学習成果をどう次につなげるか――その最後のピースとしてオープンバッジが使えるのではないか、と考えています。私たちのキャリアは、振り返ってみると8割方が偶然の出来事で形作られているという「プランド・ハプンスタンス」の考え方があります。子どもたちの探究にも当てはまる側面があります。地域の専門家との出会い、フィールドでの予想外の経験――そうした偶然を意味のある学びとして記録し、後から見返せるようにする。ここがオープンバッジの面白さだと思っています。

宮城県気仙沼市の津谷中学校では、SIPの研究プロジェクトとして、公立中学校でのオープンバッジ発行を実証してきました。総合的な学習の時間における個人探究のプロセスを、複数の評価軸で価値づけ、子ども一人ひとりの「学び方の個性」が伝わる形でバッジを発行しています。生徒たちからは「もっと地域のボランティアや部活動にもバッジが欲しい」という声が多く、消えてなくなりがちな日々の頑張りを残したい、というニーズを強く感じています。

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けせんぬま学びパスポート(公式ページ構築中)

中央教育審議会の特別活動ワーキンググループでは現在、キャリアパスポートの見直しが議論されています。デジタル学習基盤を生かして個人で記録を蓄積する方向性が示されていますが、ファイルを置いておくだけでは振り返りも進まないですし、卒業後にデータも消えてしまう。学校で発行したバッジを生徒が個人のアカウントに引き継ぎ、進学先・就職先でも持ち運べる。しかも学校外の学びとも同じ仕組みでつなげていける。――ここに、オープンバッジがキャリアパスポートの次のステップとなりうる可能性があります。

気仙沼ではすでに、まちづくり人材育成プログラムや「気仙沼まち大学」など、大人の学びにもバッジを発行する取り組みが始まっています。学校教育・社会教育・生涯学習をオープンバッジで「ゆるやかにつなぐ」――これが私たちが目指している地域の学びのかたちです。


社会教育・生涯学習における可能性

日本経済大学・社会構想大学院大学の荒木先生からは、社会教育・生涯学習領域でのオープンバッジの可能性についてお話しいただきました。

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ーー荒木先生: 私が目指したいのは、頑張ったことや努力したことが、正当に評価される世の中をつくることです。入試はペーパーテストで人を測りますが、本来は生徒会で頑張ったこと、本をたくさん読んだこと、海外で困難な地域でボランティアをしたこと――そうした経験こそが、その人を表しているはずです。これらがオープンバッジで表現され、入試や入社・転職で評価される。そんな未来を作りたいと考えています。

行政の方々にヒアリングをすると、「地域には社会教育士・防災士・救急救命士など多様な専門性を持った方がいるけれど、誰がどの専門性を持っているか把握できていない」という課題をよく伺います。オープンバッジで可視化できれば、行政も地域コミュニティも「この方にお願いしたい」と素早く動けるようになります。私自身、文部科学省の委嘱を受けて社会教育士の養成講座を担当しており、修了者へのオープンバッジ発行を続けています。修了者の方々がご自身のSNSでバッジを共有し、自分のアイデンティティを発信されている姿は、本当に頼もしいですね。

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※ 教員の管理職・実務経験を証明する「教育マネジメントオープンバッジ(OBEM)」

教員のキャリアについても、新たに「学校園・教育委員会管理職」のオープンバッジの発行を始めました。校長・副校長・主任教諭・教務主任といった管理職経験を、メタデータとして可視化するものです。教員免許のような資格は履歴書に書けますが、「管理職としてどんな経験を積んできたか」はなかなか伝わりません。人生100年時代のキャリアに、「強み専門性」や「経験」をバッジで表現していきたい。

中央教育審議会の資料には、高校時代の探究的な学びが、大学時代の「学びの意味づけ」や、社会人での「ソーシャル・ラーニング」、そして「幸せ・活躍」へとつながっているというパスが示されています。つまり探究は単独で完結するものではなく、キャリアそのものなのですね。高校での探究の成果を学会発表に出してバッジが発行され、それを総合型選抜で活かす――こうした事例はすでに動き始めています。

そして大事にしたいのが、セルフ・ソブリン・ラーニング(自己主権型の学び) という考え方です。自分の学びと情報は自分で管理し、公開・非公開も自分で判断する。学校や会社が管理するものではない。掛け算九九を学校で覚えようと、家庭で覚えようと、その学びは学習者自身のものですよね。この主体性を育てる手段として、オープンバッジを使っていきたいと思っています。


オープンバッジ受領体験・機能・事例

インフォザインの水野からは、参加者の皆さまにその場でオープンバッジを受領いただく体験ワークと、ウォレットの機能、国内外の活用事例をご紹介しました。

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会場参加者によるオープンバッジ受領体験

ーー水野:セミナーでは、参加者の皆さまにQRコードからバッジを申請いただき、メールから受領し、無料のウォレットにログインしてバッジを確認する、という3ステップを実際に体験いただきました。両会場ともに多くの方にバッジを受領いただき、コメント欄でリアルタイムにご質問や感想を共有いただきました。

ウォレットでできること

オープンバッジパスポートでは、バッジの公開・非公開設定や、同じバッジを受領した方とのコメント機能、第三者からの推薦コメント(エンドースメント)、学びの過程を残せるエビデンス(写真・URL・テキスト)、テーマごとにバッジをまとめるポートフォリオ機能などがあります。さらに、自分や仲間だけのバッジを自分で作って発行できる「セルフィーバッジ」機能も特徴です。メールアドレスを複数登録できるので、学校で取得したバッジを進学・就職後の個人アドレスに引き継ぎ、生涯にわたって持ち運ぶことができる――これが大きな魅力です。

国内外の事例から

国内事例として、稲垣先生からもご紹介いただいた津谷中学校の事例をご紹介しました。教育委員会が発行組織となり、校長先生がバッジに対してエンドースメント(推薦コメント)を書いてくださっています。さらに、校内で作成された総合的な学習の時間のルーブリックをアラインメント(関連標準)として紐付けることで、「このバッジは具体的にどのスキルを表しているか」を明示しています。

また、当社が直近で対応を進めているコンピテンシー記述の国際仕様「CASE」と、関連するオープンソース「COMPEITO」もご紹介し、北米・欧州・国際フレームワークを横断したバッジ発行が可能になることをお伝えしました。

海外では、フィンランド・オウル市の高校で運用されている「気候バッジ」(マイクロバッジを集めると大学の単位認定につながる仕組み)や、ラップランド地方の観光業従事者のスキル可視化、フランス・ノルマンディ地方での企業・大学・地域連携など、地域全体でオープンバッジを運用する事例が広がっています。

これまで「資格」として認定されてきたスキルだけでなく、コンピテンシー、非認知能力、インフォーマルな学びといった、可視化されてこなかった学びも、オープンバッジで認められていく――そんなオープン・リコグニションの文化を、日本でも広げていきたいと考えています。

NEE2026東京での配布資料ダウンロード

NEE2026大阪での配布資料ダウンロード

 


パネルディスカッション

最後のパネルディスカッションでは、フロアからの質問も交えながら、登壇者それぞれが「オープンバッジを使う意義」と「次にやりたいこと」を語りました。

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オープンバッジを使う意義

ーー稲垣氏: いろんな組織がそれぞれに発行できて、しかも生涯にわたって持ち運べる。この2点に、オープンバッジの本質的な価値があると思っています。

ーー荒木氏: 受領者が嬉しいのはもちろんですが、発行する側もすごく楽しいんですよ。そして根本にあるのは「学びを取り戻す」という思想。学びは学習者自身のものであり、セルフ・ソブリン・ラーニングを支える武器として、オープンバッジは大きな可能性を秘めています。

ーー水野: オープンバッジは、権威ある組織が一方的に発行するだけではなく、自分から獲得しに行ったり、横の関係でお互いに発行し合えるバッジでもあります。誰もが誰もの頑張りを認めてあげられる――そんな道具として広がってほしいと願っています。

次にやりたいこと

ーー稲垣氏: 気仙沼での実証を、もう少し広げていきたいと思っています。学校教育・社会教育・大人の学び――いろんなところで発行されているバッジを、学習者側で緩やかにつなげていく、そのゆるやかさが魅力です。

ーー荒木氏: これからも、学校現場・社会教育現場とともに、ボランティアや地域活動の経験を可視化する取り組みに挑戦していきたいです。

ーー水野: 学校に行けない子、ライフイベントでキャリアを諦めざるを得なかった方――そういった場所での学びもオープンバッジで可視化され、第三者に認められる。そんな社会の実現に貢献していきたいと思っています。


おわりに

両会場とも、現場の先生方から具体的なご質問を多くいただき、実践的な議論が交わされました。

オープンバッジは、認定(クレデンシャル)から承認(レコグニション)までをグラデーションで扱える仕組みです。学校で得た認定はもちろん、地域での貢献、部活動、ボランティア、探究の過程――そうした多様な学びと経験を、学習者自身が一元的に管理し、必要なときに必要な相手に見せていける。これは、人口減少時代の学びを支える基盤として、大きな可能性を持っています。

各地域・各学校がオープンバッジの導入を検討することで、子どもから大人までが学び合い、教え合うプラットフォームを実現できるのではないでしょうか。インフォザインも、その一翼を担うべく、引き続きオープンバッジの普及と活用支援に取り組んでまいります。

会場でグラフィックレコーディングを担当いただいた石原呼春氏の作品も、議論のエッセンスを見事に可視化してくださいました。改めて、ご一緒させていただいた稲垣先生・荒木先生、コーディネーターの堀越氏、ならびにご参加・ご視聴いただいた皆さまに、心より御礼申し上げます。

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(グラフィックレコーディング:デジタル・アド・サービス 石原呼春)

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