――東山様は開発本部、企画管理部で人材育成の取り組みをされています。まず、今回のオープンバッジ導入に至る背景について教えてください。
東山氏:カシオ計算機の中には、開発本部という組織があります。私はその中の企画管理部というスタッフ部門に所属しており、人事関係の仕事をしています。
人材育成の一環として、AIのリテラシーを上げる施策を私の方から提案し、実行する際にオープンバッジの導入を検討し始めました。
研修というほどのものではないのですが、AIのリテラシーを高めるための一般に公開されている学習動画を利用し、それをできるだけ多くの人に見てもらうためのインセンティブとしてオープンバッジを発行してみようと考えました。動画を視聴後、理解度を確認するために社内で作った独自の理解テストを受けてもらい、その合格者にオープンバッジを発行するというものです。
開発本部 企画管理部 東山氏
――数あるオープンバッジ発行システムの中から、オープンバッジファクトリーを採用した決め手があれば教えてください。
東山氏:決め手としてはまず、その手軽さです。
他に調べていたのが、日本のサービスで、協議会などの団体に関係するものでした。
それらのサービスではバッジを発行するためにはまず団体に入会し、会費を払う必要がありました。さらに、発行するために審査のようなものがあります。
私がやってみようと思っていることはそのような法的なものではないので、もっと気軽に導入したかったのです。
他社のものは導入のためのハードルが高そうだとわかったので、もっと気軽にできないか探していたところ、オープンバッジファクトリーに出会いました。
オープンバッジファクトリーは日本ではまだ実績が少ないかもしれませんが、世界的には実績があることがわかりましたので、信頼感はありました。その他全ての選択肢を調べたわけではないのですが、できるだけ早く開始したかったこともあり、担当者の対応が早く、契約後すぐにバッジが発行できるという点も決め手の一つとなりました。
――インフォザインが提供するサービスプランにはプロプランとプレミアムプランがありますが、どちらのプランを選びましたか。
東山氏:オープンバッジファクトリーを採用した理由のもう一つの決め手はコストです。
よりコストが抑えられるプレミアムプランを選びましたが、それは当初の施策の使用状況や発行数からすると、最初からそんなに多く発行する予定もなく、正当性がそこまで重要ではなかったためです。プロプランはブロックチェーン技術を使ったり発行可能なバッジ数が多いとのことでしたが、スタートとしてはプレミアムプランの機能でも十分だと判断しました。
CASIO 開発本部 "AIリテラシー教育"修了者に発行される修了証
――バッジデザインは外注されましたか?
東山氏:スタートとしてはまず一つのバッジからでしたので、オープンバッジファクトリーの基本的なバッジ作成機能を使って自分で作成しました。大した手間でもなく、簡単にできましたので、バッジデザインの外注コストなどもかかりませんでした。
――オープンバッジファクトリーの導入によってどのような効果があったのでしょうか。
東山氏:動画視聴と理解テストの合格者数は順調に伸びています。オープンバッジの発行メールについて、「まだ発行されないのですか?」という問い合わせがあったので、気にしている人はいるのかなと思いました。それが目的かどうかは分かりませんが、オープンバッジの獲得を心待ちにしている社員がいるのだということが分かりました。
―― バッジ受領者数や受領率はどれくらいですか?
東山氏:動画視聴後の理解テストに解答すると私のところへ通知が来ます。通知が来て合格点に達している方に対して、バッジを手動で発行しています。
この半年間で、その理解テスト合格者は約160名です。オープンバッジファクトリーの管理画面で表示されているバッジの受領率は約90%となっています。
――受領率が高いですね。バッジの存在に対して事前の案内など工夫されたことはありますか?
東山氏:オープンバッジファクトリーの管理画面ではバッジを発行する際の通知メールの案内文を自分で作成できるようになっていますので、その欄にバッジについても色々と説明を書きました。そこは工夫をしたところですので、受領率の向上につながったのではないかと考えています。
――受領者の皆さんは取得したバッジをウォレット上などで公開はされていますか?
東山氏:オープンバッジパスポートについても社員に案内はしていますが、残念ながらオープンバッジパスポートで公開している人は少ないです。そこにはハードルがあるみたいですね。例えば、転職活動や社内試験の際に個人的に見せるのは良いかもしれませんが、全世界の人に見られてしまうことへの抵抗感はあるのだと思います。
バッジ情報はウォレットサービスのオープンバッジパスポート上でも公開されている
――導入にあたってご苦労されたのはどのような点ですか?
東山氏:新たな取引開始に関する社内手続きの中で、クラウドサービスへの社員の個人情報(氏名、メールアドレス)のアップロードに関する社内許可の取得には少し時間を要しました。
特に、カシオ計算機のような規模の企業においては個人情報保護に関する基準が厳格です。オープンバッジファクトリーもヨーロッパの会社なのでGDPRなどの規制は遵守されていると思いますが、当社の社内基準が主に日本国内の状況を前提としていたため、それにどう対応するのか分かりづらかったです。
具体的には、オープンバッジファクトリーがクラウドサービスを利用する上で、当社の個人情報保護に関する社内ルールをクリアしているかを確認するのに手間がかかりました。最終的には会社から許可が出ましたが、この許可の申請は毎年行う必要があります。
また、インフォザイン社との取引も初めてでしたので、色々な書類を出していただいたりして手間取らせてしまったかと思います。
――今後、構想されていることがありましたら教えてください。
東山氏:今後の展開としては、今はまだ一つの施策にしか使っていませんが、他の様々な人材育成施策に展開できたらと思っています。ただ、それは担当者が私ではないものが多いので、お勧めすることしかできません。
また、一般的なウォレットサービスで自分の情報を公開するのは抵抗があると思いますが、例えば社内ポータル上でオープンバッジの画像データだけでも、社内限定で公開するとか、そういうことは考えてみたいと思っています。
クローズドな環境であれば自分のバッジを公開する人も増えるのではないでしょうか。
現在進行中の施策については毎週必ず誰かしら修了していますので、継続していく中で修了者を増やしていきたいです。
オープンバッジ導入に際しては、まずは第一歩を踏み出してみる、まずはバッジを発行してみるということがハードルとなることがあります。
規模の大きな組織で新たにオープンバッジを導入する場合、スキル標準はどうするか、発行基準はどうするか、質の担保は…といったバッジ発行の前提条件を組織内で合意形成することに、時間や労力がかかる場合があります。
今回のカシオ計算機様の事例からは、まず一つの施策にオープンバッジを活用してみようというスモールスタートでの導入により、発案者によるスピーディな意思決定が可能であったことから、短期間で実現できたことがうかがえます。
今回の施策でバッジを獲得した社員の方々には、学習意欲を継続し、更なるスキルアップに繋げていただければ幸いです。
取引開始にあたり諸手続きにお手数をおかけしましたが、今後は日本の大企業様にもスムーズに導入していただけるよう、インフォザインとしても必要な情報を迅速に提供できる体制を整えるなど、サービス向上に努めてまいります。
貴重なお話を聞かせていただきありがとうございました。
オープンバッジファクトリーは、デジタル証明としての国際的な技術標準規格であるオープンバッジ 2.0に準拠した「オープンバッジ」を作成・発行・管理するためのプラットフォームです。
公的な資格試験の合格証から、講座の修了証、イベント参加証、スキル証明や、ゲーム感覚の楽しいバッジ集めまで、教育機関だけでなく、NGOや企業内での人材育成など、子どもから学生・社会人まで、さまざまな用途に対応します。
修了証の発行をデジタルバッジで行うだけでなく、既存の学習活動にオープンバッジを適用することで、マイクロクレデンシャルの導入やゲーミフィケーション化が可能になり、学習成果をより明確かつ魅力的に示すことができます。
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「株式会社インフォザイン」は、東京 上野にオフィスを構え、教育とテクノロジーを融合させたEdTech分野でビジネスを展開しています。
「オープンソースとオープンスタンダードを活用し、教育の未来を創る」ことを目指し、特に力を入れているのは、ルクセンブルクのOAT社が開発したWebベースでアセスメント・テストを実施するためのCBT(Computer Based Testing)プラットフォーム「TAO」をベースとした新サービスの開発と提供です。
オンラインアセスメントのためのSaaS版CBTプラットフォーム「TAOクラウドJP」をはじめ、学力調査、大学入試、各種資格・検定試験などのCBT化に実績のあるアセスメントサービスを提供しています。
また、学習歴の可視化の手段として利用が広がっているオープンバッジの発行プラットフォーム「オープンバッジファクトリー」の日本における独占販売契約を締結し、サービスを提供しています。
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